要約
行政書士法違反は外部委託先だけでなく依頼企業も問われる。無資格代行への発注が両罰規定の対象となるケースと、合法的な外部委託の境界線を実務視点で解説。
無資格代行を外部委託すると行政書士法違反になるか
行政書士法は、官公署に提出する許認可申請書類の作成・提出手続きを「業として」行う場合、行政書士資格が必要と定めています。問題になるのは、この業務を外部のコンサルティング会社や業務委託先に丸ごと発注するケースです。「委託先に任せているだけ」という認識では済まされない場面があり、依頼企業・発注企業も含めた連鎖的な法的リスクを正確に把握しておく必要があります。
行政書士法第19条は、行政書士または行政書士法人でない者が、業として第1条の2に規定する業務を行うことを禁じています。違反した場合は、同法第21条により1年以下の懲役または100万円以下の罰金が科されます。さらに重要なのが両罰規定(第23条の2)の存在です。法人の代表者や従業員が違反行為を行った場合、行為者本人だけでなく法人そのものも処罰される可能性があります。外部委託先の担当者が違反を犯したケースでも、委託元の企業が「共犯」として問われる事態は十分に想定されます。
外部委託で違法になる具体的なケースとならないケース
では、どのような外部委託が行政書士法違反に該当し、どのような形であれば合法的に代行を依頼できるのでしょうか。実務上の境界線を整理します。
【違法になる可能性が高いケース】
①コンサルティング会社に許認可申請書類の作成を有償で依頼し、そのまま官公署へ提出させる。②業務委託契約の名目で、実態は申請書類の作成から提出まで無資格者に一括対応させている。③「申請支援サービス」として提供している外部業者が、実際には申請書類を作成・代理提出している。④フリーランスの行政コンサルタントに建設業許可や宅建業免許の申請書類を作成させ、報酬を支払っている。
これらはいずれも、行政書士資格を持たない者が「業として」申請書類を作成・提出しており、行政書士法第19条の禁止規定に抵触します。委託元企業は「知らなかった」では済まされず、状況によっては幇助犯・共謀共同正犯として捜査対象になりえます。
【合法的に外部委託できるケース】
①外部委託先が行政書士または行政書士法人の場合:これは当然合法です。契約書に資格者名・登録番号を明記することが推奨されます。②業務内容がコンサルティング・助言・情報提供のみで、書類の作成・提出は自社で行う場合:外部業者が書類のひな形を提供し、最終的な作成・記名・提出を自社または行政書士が行う形であれば問題ありません。③社内の従業員が自社の申請書類を作成する場合:いわゆる「自己業務」として、社員が自社の許認可申請書類を作成・提出することは行政書士法の規制対象外です。
外部委託契約書に潜む「グレーゾーン」の見極め方
実務でよく問題になるのが、契約書の文言と実態が乖離しているケースです。たとえば、「申請支援業務委託契約」という名称であっても、実態として外部業者が申請書類を作成・提出している場合は、行政書士法違反となります。名称や契約形態ではなく、「誰が書類を作成し、誰が提出しているか」という実態で判断されます。
チェックすべきポイントは以下の通りです。①委託先の担当者が行政書士登録をしているか(日本行政書士会連合会の名簿で確認可能)。②業務範囲の記載が「助言・情報提供・確認」に限定されているか、それとも「作成・提出」まで含んでいるか。③委託先が「一式対応」を売り文句にしている場合、具体的に何を行うか書面で確認しているか。④報酬体系が「申請完了」を条件とした成果報酬型になっていないか(申請完了まで責任を持つ形は、実態として代理申請に近くなる)。
法務・コンプライアンス担当者は、業務委託契約の締結前に上記の観点から精査し、必要に応じて行政書士資格者との契約に切り替えることを検討してください。
違反が発覚した場合の企業リスクと対応策
行政書士法違反が発覚するルートは、主に①競合他社や同業者からの通報、②行政書士会からの告発、③申請先の行政窓口での不審察知、④税務調査や行政調査の副産物として発覚、の4つです。特に許認可を多数扱う建設業・不動産業・運送業などは調査頻度が高く、リスクが顕在化しやすい業種といえます。
違反が発覚した場合、企業が直面するリスクは刑事罰(両罰規定による法人への罰金)にとどまりません。取得した許認可が問題視される場合もあり、事業継続に支障をきたす可能性があります。また、コンプライアンス違反として取引先・金融機関・行政機関からの信用失墜につながりかねません。
対応策として、まず既存の外部委託契約を棚卸しし、行政書士資格の有無を確認することが第一歩です。無資格業者への発注が判明した場合は速やかに契約を見直し、行政書士法人との契約に切り替えるか、自社内での対応体制を整備してください。また、コンプライアンス担当者向けの社内研修に「行政書士法の規制範囲」を加えることも有効です。行政書士法は決して行政書士業界だけの問題ではなく、外部委託を活用するすべての企業に関わる法律です。無資格代行の委託は「便利なアウトソーシング」ではなく、違法行為への加担となることを、組織全体で共有することが求められています。
よくある質問
- Q.無資格のコンサル会社に許認可申請を外部委託したら行政書士法違反になりますか?
- A.実態として書類の作成・提出を行政書士資格のない者が担っている場合は違法です。委託元企業も両罰規定により処罰対象となり得ます。
- Q.外部委託先が行政書士資格を持っているか確認する方法はありますか?
- A.日本行政書士会連合会のウェブサイトで行政書士名簿を検索できます。契約前に登録番号を書面で確認することを推奨します。
- Q.「申請支援」名目の業務委託なら行政書士法の規制対象外ですか?
- A.契約の名称ではなく実態で判断されます。実際に書類を作成・提出していれば「申請支援」名目でも行政書士法違反となります。
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