要約
行政書士法の両罰規定により、従業員が無資格代行を行えば会社も罰金刑の対象となる。許認可申請に関わる企業が講じるべきコンプライアンス対策を解説。
行政書士法違反の「無資格代行」とは何か:会社が知っておくべき基本
行政書士法は、他人の依頼を受け報酬を得て、官公署に提出する許認可申請書類の作成・提出手続き代理を業として行うことを、行政書士資格者に限定しています(行政書士法第1条の2、第19条)。つまり、行政書士の資格を持たない者が、報酬を受けて他人の許認可申請書類を作成・代行することは、原則として違法な無資格代行となります。
問題は、こうした無資格代行が「会社の指示のもとで従業員が行った」場合に、会社そのものがどのような責任を負うかという点です。法務・コンプライアンス担当者であれば、「従業員が勝手にやったこと」で済むのか、それとも会社ぐるみの問題として追及されるのかを、あらかじめ正確に把握しておく必要があります。
行政書士法第19条に違反した場合、同法第21条により「1年以下の懲役または100万円以下の罰金」が科されます。そして、重要なのは同法第22条の2に定める両罰規定の存在です。この規定により、違反行為を行った従業員個人だけでなく、その法人(会社)に対しても罰金刑が科されることがあります。
両罰規定とは何か:従業員の行為で会社が罰せられる仕組み
両罰規定とは、従業員などの行為者が刑事罰を受ける場合に、その使用者である法人もあわせて処罰する規定です。行政書士法第22条の2は、「法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、第21条の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対しても、同条の罰金刑を科する」と定めています。
この規定のポイントは、「会社が違反を知っていたかどうか」を問わない点です。従業員が業務として無資格代行を行った事実があれば、会社は「知らなかった」「指示していなかった」という弁解だけでは免責されません。ただし、法人側が「相当の注意を払い、かつ違反防止のために必要な措置を講じていた」ことを立証できれば、免責が認められる余地があります。この免責立証責任は会社側にあり、実務上は非常にハードルが高いとされています。
つまり、社内で許認可申請の代行サービスを提供しているケース、あるいはコンサルティング業務のなかで申請書類の作成を請け負っているケースでは、担当社員が行政書士資格を持っていない場合、会社全体に罰金刑のリスクが生じることになります。
会社が特に注意すべき無資格代行の典型パターン
許認可申請にかかわる無資格代行のリスクは、特定の業種・業態に集中する傾向があります。以下に、会社として特に注意が必要な典型パターンを整理します。
①コンサルティング会社・士業隣接サービスの場合
経営コンサルタント、中小企業診断士、税理士法人などが、クライアントの依頼を受けて許認可申請書類の「作成」まで踏み込んでいるケースは少なくありません。アドバイスの提供にとどまる限りは問題ありませんが、申請書類の作成・代理提出を報酬と結びつけて行えば、行政書士法違反の無資格代行となり得ます。
②業務委託・アウトソーシングで外注した場合
外部の業務委託先(フリーランス、無資格の代行業者など)に許認可申請業務を依頼し、その委託先が無資格代行を行った場合でも、依頼元の会社が「業務として関与した」と判断されれば、両罰規定の対象となる可能性があります。委託先に行政書士資格があるかどうかの確認を怠った場合、「相当の注意」を尽くしていないとみなされるリスクがあります。
③社内で許認可申請の担当部署を設けているケース
会社内に「許認可申請サポート部門」などを設置し、他社のために申請書類を作成・提出する業務を行っている場合、担当社員が行政書士資格を保有していなければ、組織的な無資格代行として厳しく評価されます。
④名義貸しによる実質的な無資格代行
行政書士の資格者を名目上の担当者として記載しつつ、実際の書類作成は無資格者が行っているケースは「名義貸し」として行政書士法でも禁止されており(同法第13条の6)、違反者・会社ともに罰則の対象です。
会社が講じるべきコンプライアンス対策:違反リスクを下げるための実務ポイント
両罰規定による法人処罰を回避するためには、会社として「相当の注意を払い、違反防止に努めた」という実態を社内に構築しておくことが不可欠です。以下の対策を参考にしてください。
①業務範囲の明文化と社内規程の整備
許認可申請に関する業務について、「どこまでがコンサルティング(合法)で、どこからが書類作成代行(要資格)に当たるか」を社内規程や業務マニュアルに明記します。特に、クライアントから書類作成を求められた際の対応フローを明確にしておくことが重要です。
②業務委託先の資格確認を契約プロセスに組み込む
外部に許認可申請関連業務を委託する際には、契約締結前に委託先が行政書士資格を有しているか、または行政書士事務所と連携しているかを書面で確認します。資格証の写しを取得し、保管しておくことがコンプライアンスの証跡になります。
③社員への定期的な法令研修の実施
行政書士法の無資格代行禁止規定と両罰規定の内容を、法務・コンプライアンス研修の一環として全従業員に周知します。特に、許認可申請業務に近い部署(営業・コンサル・事業推進など)には、より具体的なケーススタディを用いた研修が効果的です。
④疑義案件の相談ルートを整備する
「この業務は行政書士資格が必要か」と現場が判断に迷ったとき、法務担当や外部の行政書士に相談できる体制を整えます。相談記録を残すことで、会社として「注意を尽くした」という証拠にもなります。
行政書士法に基づく無資格代行の違反リスクは、従業員個人にとどまらず、会社全体の信用・経営に直結します。両罰規定の仕組みを正しく理解し、組織的なコンプライアンス体制を整えることが、法務担当者に求められる実務対応の核心です。
よくある質問
- Q.従業員が無資格で許認可申請を代行した場合、会社も罰則を受けますか?
- A.はい。行政書士法第22条の2の両罰規定により、従業員の違反行為が業務に関連する場合、会社(法人)にも最大100万円の罰金が科されます。
- Q.会社が「知らなかった」「指示していない」と主張すれば両罰規定から免れますか?
- A.原則として免責されません。免責には会社側が「相当の注意を払い違反防止措置を講じていた」と立証する必要があり、実務上ハードルは高いです。
- Q.外部委託先が無資格で許認可申請を代行した場合、依頼した会社にも責任が及びますか?
- A.委託先の資格確認を怠った場合、依頼会社が「業務として関与した」と判断され、両罰規定の対象となる可能性があります。事前の資格確認が必須です。
具体的なケースを行政書士に相談したいですか?
相談窓口を準備中です。ご要望をお聞かせください(入力不要・ワンクリック)。