要約
会社設立の定款作成・申請書類作成を無資格で代行すると行政書士法・司法書士法違反。両罰規定により法人にも罰金が科されるリスクがある。合法な範囲と違法な範囲を解説。
会社設立の代行と行政書士法:どこから「違法」になるのか
「会社設立をサポートします」と謳うコンサルタントやITサービスは数多く存在します。しかし、無資格者が会社設立手続きを代行することは、行政書士法に抵触する可能性があります。冒頭から結論を示すと、報酬を得て他人の依頼に基づき定款作成や各種許認可申請書類を代わりに作成・提出する行為は、行政書士資格なしには原則として違法です。
行政書士法(昭和26年法律第4号)第1条の2は、行政書士の業務を「他人の依頼を受け報酬を得て、官公署に提出する書類の作成」と定義しています。会社設立には定款認証、法務局への設立登記申請書類の作成、さらに業種によっては許認可申請が伴います。このうち「定款の作成」は行政書士の独占業務であり、「登記申請書類の作成」は司法書士の独占業務です。これらを無資格者が報酬を得て代行することは、それぞれの士業法に違反します。
ビジネスコンサルタントや起業支援会社が「会社設立を丸ごと代行」とサービス提供する場面は増えていますが、法的に許容される範囲と違法となる範囲を正確に把握しておくことが、法務担当者・経営者にとって不可欠です。
無資格代行が許される範囲と「グレーゾーン」の実態
会社設立に関するサービスが全て違法というわけではありません。無資格者であっても合法的に提供できる業務と、行政書士・司法書士資格が必要な業務は明確に区別されます。
【無資格でも合法な業務】
- 会社設立に関する一般的な情報提供・アドバイス(コンサルティング)
- 必要書類の種類や手続きの流れを説明する教育的サポート
- 依頼者が自ら作成した書類のチェックリスト提供
- 登記申請のシステム入力補助(依頼者が最終確認・提出する場合)
【資格が必要な業務】
- 報酬を得て他人の依頼で定款を作成すること(行政書士の独占業務)
- 報酬を得て登記申請書類を作成・提出代理すること(司法書士の独占業務)
- 会社設立後の許認可申請書類を報酬を得て作成すること(行政書士の独占業務)
問題はグレーゾーンです。近年、クラウド型の「会社設立サービス」が普及しており、「ユーザーが自分で入力し、システムが書類を自動生成する」形式は一般的に合法と解されています。しかし、サービス担当者が実質的に入力内容を代わりに決定・入力し、依頼者は署名するだけ、という運用になっていれば実態は無資格代行であり、行政書士法違反のリスクがあります。「ツールを提供しているだけ」という言い訳は、実態が代行業務であれば通じません。
無資格代行を行った場合の罰則と両罰規定
行政書士法第19条は、行政書士でない者が業として行政書士の業務を行うことを禁止しており、違反した場合は1年以下の懲役または100万円以下の罰金(同法第21条)が科されます。
さらに重要なのが両罰規定(同法第22条の2)の存在です。違反行為を行った従業員個人だけでなく、その従業員が所属する法人(会社)にも同額の罰金刑が科される可能性があります。つまり、「社員が勝手にやった」では企業としての責任を免れないのです。起業支援会社、コンサルティング会社、税理士法人(税理士は会社設立の書類作成を一部行えますが、定款作成は認められていない等、各士業の業務範囲に注意が必要です)が会社設立代行を商品化する際は、この両罰規定のリスクを必ず検討する必要があります。
また、依頼する側の企業・個人も注意が必要です。無資格者に依頼した依頼者自体が直接罰せられることは現行法上多くありませんが、作成された書類の有効性・適法性に疑義が生じたり、申請が受理されないリスクを負うことになります。さらに、違反業者と知りながら依頼を継続した場合に共犯的な責任を問われる可能性を完全には否定できません。
企業・コンサルが取るべき実務対応のチェックポイント
会社設立支援サービスを提供している、または利用しようとしている企業・コンサルタントは、以下のポイントを実務チェックリストとして活用してください。
【サービス提供者側のチェックリスト】
- ✅ 定款作成・登記申請書類作成を自社で行っている場合、行政書士・司法書士との提携契約が締結されているか
- ✅ 契約書や広告に「書類作成代行」「申請代行」と明記していないか(事実上の代行業務と判断されるリスク)
- ✅ システムの「自動生成」が実態としてスタッフによる代行入力になっていないか
- ✅ 行政書士・司法書士の名義貸しによる業務提携になっていないか(名義貸しは士業法違反)
【サービス利用者側のチェックリスト】
- ✅ 依頼しようとしているサービス提供者が行政書士・司法書士の資格を持っているか、または正式に提携しているか確認する
- ✅ 「格安・スピード会社設立」を謳う無資格業者でないか、事務所の行政書士登録番号等を確認する
- ✅ 費用の安さだけで判断せず、資格の有無・適法性を確認する
デジタル化の進展により、会社設立手続きのオンライン化も進んでいますが(デジタル庁が推進する行政手続きのデジタル化施策等)、手続きの電子化が進んでも「書類を作成する行為の主体が誰か」という本質的な問いは変わりません。デジタルツールを活用しつつ、適法な形で会社設立支援を組み立てることが、コンプライアンス上の正しいアプローチです。会社設立後に必要となる許認可申請についても、行政書士への適切な依頼を前提とした業務フローを設計しておくことが、法務担当者として求められる対応です。
よくある質問
- Q.会社設立の手続きをコンサルタントに頼むと違法になりますか?
- A.定款作成や登記申請書類の作成を報酬を得て代行するには行政書士・司法書士資格が必要です。情報提供・アドバイスのみなら無資格でも合法です。
- Q.クラウド型の会社設立サービスを使うのは違法ですか?
- A.依頼者自身が入力・確認・提出する形なら合法ですが、スタッフが実質的に代わりに書類を作成している場合は無資格代行として違法になる可能性があります。
- Q.無資格代行を依頼した会社にも罰則がありますか?
- A.依頼者側が直接罰せられるケースは少ないですが、両罰規定により無資格代行を行った業者の法人には罰金が科されます。作成書類の有効性リスクも生じます。
具体的なケースを行政書士に相談したいですか?
相談窓口を準備中です。ご要望をお聞かせください(入力不要・ワンクリック)。