要約
ビザ申請代行サービスが行政書士法違反になる条件と合法的に提供できる範囲を解説。両罰規定による企業リスクも含めてコンプライアンス担当者向けに整理します。
ビザ申請代行サービスと行政書士法:無資格代行が違法になる条件
「ビザ申請のサポート」「在留資格手続きの代行」を有償で提供するサービスが増えています。しかし、行政書士法を知らずに参入すると、無資格代行として刑事罰を受けるリスクがあります。ビザ申請代行サービスを提供している企業・コンサルタント・人材会社の法務担当者は、どこまでが合法で、どこからが違法なのかを正確に把握しておかなければなりません。
行政書士法第1条の2は、「行政書士は、他人の依頼を受け報酬を得て、官公署に提出する書類を作成することを業とする」と定めています。そして同法第19条は、行政書士でない者がこの業務を行うことを禁じています。在留資格(ビザ)に関する申請書類は「官公署に提出する書類」に該当するため、資格なしで報酬を得て作成・代行することは行政書士法違反となります。
「書類作成の代行」と「サポート・コンサルティング」の違い
ビザ申請代行サービスをめぐる実務上の最大の論点は、「どこまでが許容されるか」です。行政書士法が禁じるのは、あくまで「他人の依頼を受け報酬を得て、書類を作成すること」です。したがって以下のような行為は、無資格者でも合法的に行うことができます。
- 申請に必要な書類の一覧を案内する(情報提供)
- 申請手順や要件についてアドバイスする(コンサルティング)
- 本人が記載した書類の内容確認を促す(チェックリスト提供)
- 申請窓口や問い合わせ先を紹介する(案内業務)
一方、次のような行為は行政書士資格なしで報酬を受け取ると違法になります。
- 在留資格認定証明書交付申請書を代わりに記載・作成する
- 申請人に代わって在留期間更新許可申請書を完成させる
- 就労ビザの申請書類一式を有償で作成して依頼者に渡す
- 申請書類に署名・押印のみ残して全て代行作成する
「書類を作るのはお客様自身で、私たちはあくまでサポートです」という言い方をしているサービスでも、実態として担当者が申請書類の大部分を作成していれば、行政書士法違反と判断される可能性があります。行為の実態が問われる点に注意が必要です。
申請取次と行政書士資格:「申請取次行政書士」制度を正しく理解する
入管手続きには「申請取次」という制度があります。申請取次とは、申請人本人が出頭せず、代理人が出入国在留管理局の窓口に書類を提出できる制度です。しかしこの申請取次ができるのは、出入国在留管理庁に届出を行った「申請取次行政書士」に限られます(申請取次弁護士・一部の機関も含む)。
つまり、ビザ申請代行サービスを「書類作成+窓口提出まで一括で代行する」という形で提供するためには、行政書士資格に加えて、申請取次の届出資格も必要です。この二重の要件を満たさずに「ビザ申請を全部お任せください」と広告することは、行政書士法違反のリスクがあるだけでなく、入管法上の問題にもなり得ます。
なお、在留資格申請については入管法に基づく「取次者」制度もあり、雇用主企業の人事担当者が自社従業員の申請を取り次ぐケースは適法です。しかし第三者として報酬を得て複数企業のビザ申請を取り次ぐ行為は、行政書士法の規制対象になります。
両罰規定が適用されるケース:会社が負う法的リスク
行政書士法違反で注意すべきは、違反した個人だけでなく、その法人(会社)にも罰則が科される両罰規定が存在することです(行政書士法第21条の2)。たとえば、会社の担当者が無資格でビザ申請書類を有償作成していた場合、担当者個人が刑事罰を受けるだけでなく、会社も罰金刑の対象となります。
特に近年、人材紹介・人材派遣・外国人採用支援を手がける企業が、サービスの一環としてビザ申請代行を提供するケースが増えています。このような事業モデルでは、「書類作成の部分は行政書士に委託しているか」「そもそも自社内に申請取次行政書士がいるか」を明確にしておかないと、両罰規定に基づくコンプライアンスリスクを抱えることになります。
法務担当者としては、以下の点を社内でチェックすることが不可欠です。
- 自社サービスの中に在留資格申請書類の作成代行が含まれていないか
- 外部業者に申請書類作成を委託する場合、その業者が行政書士資格を持っているか
- 「サポート」「代行」という言葉を使ったサービス内容の実態を定期的に確認しているか
- 申請取次行政書士が社内にいる場合、届出の有効期限が切れていないか
ビザ申請代行サービスは、外国人雇用が拡大する中でニーズが高まっている分野です。だからこそ、行政書士法のラインを正確に理解し、無資格代行・違法リスクを排除した適法なサービス設計が求められています。コンプライアンス担当者は、サービス立ち上げ時だけでなく、定期的な内容の見直しを行うことを強く推奨します。
よくある質問
- Q.ビザ申請のコンサルティングだけなら行政書士資格は不要ですか?
- A.申請要件の説明や手順のアドバイスなど書類作成を伴わないコンサルティングは無資格でも可能です。ただし有償で書類を作成する行為は行政書士法違反になります。
- Q.社員の在留資格申請を人事担当者が取り次ぐのは違法ですか?
- A.自社従業員の申請を雇用主が取り次ぐ行為は入管法上認められています。ただし第三者として報酬を得て複数企業の申請を代行する場合は行政書士法の規制対象になります。
- Q.ビザ申請代行で両罰規定が適用されると会社はどうなりますか?
- A.行政書士法第21条の2の両罰規定により、担当者個人の違反行為であっても法人に対しても罰金刑が科される可能性があります。会社全体のコンプライアンス管理が必要です。
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